"不定期連載"鞍馬の火祭り(2)〜仲間制度とは〜

火祭りまで一ヶ月を切り、いよいよお祭りムードも鞍馬では高まってきています。昨日は祭りで仕様する草鞋(わらじ)が到着しました(上記写真参照)。
さて本日紹介しますのは、祭りのシステムであります仲間制度についてです。
「七仲間」と呼ばれるこの制度は、祭りにおける動きの分担を円滑に行うために作られたシステム、と言えるでしょう。しかし、毎年どの仲間に属するか変更があるわけではなく、昔からずーっと各家が属する仲間が決まっており、変わることはありません。では仲間について軽く説明致します。

大惣(おおぞう)仲間
構成件数が多く、大変有力な仲間。特徴は、仲間長が世襲制であり、同じ家の者が長になるということ。
名衆(みょうしゅ)仲間
由岐明神と八所明神*1の祭祀を担当している、要は神社に仕える仲間。
宿直(しゅくじき)仲間
名前通り、昔に宿を営んでいた者の仲間。鞍馬寺と由岐神社*2に関する事務を司っていたようだ。
僧達(そうだち)仲間
宿直仲間と同じく、鞍馬寺と関係の深い仲間。法師名を名乗る。
大工衆(だいくしゅう)仲間
名前のとおり、大工であった者の仲間。大工といっても、鞍馬寺の建築方であったと伝えられている。
太夫(たゆう)仲間
大惣仲間から別れたと伝えられている仲間。現在では1軒しか残っていない。しかし、祭りの中では注連縄(しめなわ)を切ることができる唯一の仲間である。
脇(わき)仲間
最も数が多い仲間。であると同時に、基本的には外来者がこの仲間に属することが多く、仲間の中では最も地位が低いと言っても過言ではない。

昔からの制度であるこの仲間制度は、権力関係が非常にはっきりしているシステムとなっており、例えば現在でも脇仲間が発言をすると、大惣仲間に怒鳴られてしまうだとかがあるそうです。我が家のおばあちゃんは、大惣の出身でしたが、脇である我が家に嫁ぐ際には大変な問題になったそうです。時代錯誤甚だしい、と思われるかもしれませんが、古い制度を色濃く残す祭りであるからこそ、このような魅力的な祭りとなるわけです。


前回説明した通り、祭りでは最初に各仲間の拠点となる場所*3に集まります。その後、鞍馬の中心部である山門の麓に向かいます。昔は仲間同士の交流が通常生活でも盛んで、他の仲間に属する家との交流はあまりなかったようです。ですが、祭りの時だけは顔なじみでない人とも山門で合流し、「火」を通して交流するわけです。現在では鞍馬の規模が小さくなり、ほとんどの人同士が顔見知りですが、鞍馬を出てしまった人などこの日しか会えない人とも交流でき、この日を喜ぶわけです。
ほんの数十平方メートルに何十本もの松明が集まるその様子は、鞍馬の人の心だけでなく、見る者全ての心を奪ってしまう、壮大な祭りなのです。


次回は、非常に特徴的な祭りの服装について説明したいと思います。

*1:この祭りの神様

*2:この祭りの神様の祭られている、鞍馬にある神社

*3:宿(やど)と呼ばれます